「やっぱりレスターか・・・」イギリス人が納得する新型コロナ感染者数が増加してしまったお家事情。
今回の新型コロナでの死者数に関しては、イギリスは世界的に見ても人口比率では『世界最悪』とも言われています。医療崩壊ギリギリの大打撃を受け、英国政府の初期対応の類まれなる遅さ、相次ぐ判断ミスや先の見通しの悪さから6月29日現在4万3千人以上の死者を出す結果をもたらしました。殆どの政府の施策が後手後手となり、もはや新型コロナはイギリスにおいては『人災』ではないかという気持ちさえ沸きおこります。世界に誇る医療技術・医療システムをもってしても、死神が嘲笑うかの如く毎日本当に多くの方が亡くなっていったロックダウン開始から現在までのこの3ヵ月。
死者を多数出したいくつもある原因の一つとして、いつも話題にのぼりつつも、まるで腫れ物に触れるかように専門家や政治家がこの件に関しては言葉を濁していた問題。それは・・・
アジア系、アフリカ系黒人の患者は重症化しやすいのでは?
という点でした。イギリスでアジア系とはインド人、パキスタン人などのことを指し、何故かこのエスニック・バックグラウンドがある方は年齢に関わらず重症化する傾向があるといったことが以前から指摘されていました。文化や食生活の違いから、これらの民族には高血圧、糖尿病、肥満、心臓病が多く見られ、そのことが今回の感染症と何らかの因果関係があるのではと言われています。
そのような傾向は、ともすれば「非イギリス人の感染死亡者が多い=医療現場において人種差別が存在するのではないか?」といった議論に発展する危険もある為、多くの見識者も問題提起をしながらも「今後の調査を待って・・・」と言葉を濁して終わるという事の繰り返しを行っていました。
さて、ロックダウンが明けた6月15日から数日後、「レスターでの感染者が増加している」というニュースが流れました。
「レスター市内での感染者数は他の同規模の市町村に比べても突出して多く、2位と比べても約3倍以上である」
イギリス人が感じたことは「やっぱりね・・・」。
レスターはインド人、パキスタン人といったアジア系の人口が2011年の国勢調査の時点で37%以上であり、アフリカ系やカリブ系の黒人とその家系に属する人達は10%と、White Britishと呼ばれる白人系イギリス人の45%と比べるとかなり高い比率であることは周知の事実であり、10年後である現在においては、その『外国人』比率は更に増加していると言われています。(余談:レスターはインド以外では世界で最も本格的なインドカレーが食べられる土地としても有名で、週末ともなればイギリス全土から本場のカレーを求めて多くのグルメが訪れます。)
またこのグループに属する人々の中には収入面や住居環境において恵まれていない人たちも多く、狭い家に大勢で住み、そこで衛生管理が出来ていなければあっという間に感染は広がってしまうとして、「これは感染症問題というよりも住居環境の問題である」という専門家もいました。
話は変わって、6月15日にロックダウンが部分解除となった直後に、イギリスは30度を超える大変な好天に恵まれ、リゾート地のビーチに約50万人も繰り出しました。マスクもなく、ソーシャル・ディスタンスもほぼない状態で楽しい時間を過ごしている若者達をテレビで見て、「これではまた感染が広がるのでは?」と危機感を覚えたイギリス人も多かったことでしょう。そのリゾート地の地元の方の恐怖は想像するに難くなく、「(ソーシャル・ディスタンス等の)ルールに反した人達を取り締まる為の権力(ビーチを閉鎖するなど)を与えて欲しい」と政府にも訴えていました。
感染拡大初期の初動規制が大きく立ち遅れたイギリス政府。3ヵ月のロックダウンの後は、『New Normal』と言いながら、ロックダウンから元の生活に戻すことを余りにも急ぎすぎた感のあったイギリス政府。「これでは感染が再度拡大するに違いない」と感じた人達も多く、そして、レスターではその通りとなりました。2週間後はこのビーチで感染拡大が起こっても不思議ではないでしょう。
ある意味レスターでの感染拡大はスケープゴートとして大変有効だったと感じます。「政府は本気だ。ルールに従わなければ、皆レスターみたいになるんだぞ!」とそんな声が聞こえてくるかのようです。この「いけにえ作戦」が功を奏し、レスターが最初で最後の「見せしめ都市」となることを祈るばかりです。
理由はどうであれ、レスター市内には感染すれば重篤になる可能性のある人々が多く生活しているという事実がある以上、レスター市民は多少の我慢はするべきであり、そういう点ではこのような結果になったことは喜ぶべきなのではとも感じます。ただ、本当に気の毒なのは本来であれば7月4日から営業再開が出来た筈のパブ、レストラン、ヘアサロンに従事する方々。少しだけの支援金を貰えたとしてもどこまで頑張ることが出来るのか。問題はまだまだ山積みです。
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